データ系列とは何であり、なぜ重要なのか

データ系列の追跡により、企業がデータの取得元やシステム内のプロセスを追跡し、ビジネスデータのコンプライアンスと正確性を維持することが可能になります。

データ系列(データリネージ、データリネージュ)とは、組織のデータの取得元から、すべてのプロセスや
変更を経て、データの保存・利活用に至るまでのストーリーを指し、データがどのようにして
現在の形になったかを段階的に記録することで、データに加えられた変換や、
さまざまなビジネスシステム間でのデータの流れを理解できるようになります。データ
系列は、以下のような情報を提供する地図と考えるとわかりやすいかもしれません。

  • データの作成日時や変更点
  • データに含まれる情報
  • データの使用方法
  • データの作成元
  • 誰がデータを使用し、ライフサイクルの各段階を承認・実行したか

このようにデータ系列によってデータのフロー全体をマッピングすることで、あらゆる
段階のデータを理解、文書化、可視化することが可能となります。

 

なぜデータ系列の追跡が重要なのか

あらゆるビジネスシーンでデータが蓄積されており、在庫データ、POS、IoT(モノのインターネット)デバイスなど、さまざまなソースからデータが流れ込んできています。こうした膨大なデータをどのようにクレンジング、整理、保存、管理するかが、組織の成功におけるカギとなっています。

組織のあらゆる部門が、データ系列を重要視しています。ITチームの多くが、
運用、コンプライアンス、プロセスなどの技術関連のデータ系列に関心を持つ
一方で、トップマネジメントは、ビジネスプロセス全体における
データの役割を理解し、重要なビジネス上の意思決定に用いられるデータが
正確であるかどうかを確認するために、ビジネスに関連するデータ系列に
注目しています。

追跡済みのデータは検証が容易

データ主導の意思決定は、生データの正確性に大きく左右されます。
トップマネジメントは、検証・認証済みのデータから得られたインサイトであると
知っていれば、自信を持って行動を起こせるようになります。データの追跡が綿密に
行われていないと、その正確性を検証するのに時間と労力がかかるだけでなく、
コストもかさみます。一方で、クリーンで構造化されたデータでは、異常を簡単に特定できます。データの
追跡や一貫性の維持を実現するにあたっては、「百の治療より一の予防」という
ことわざにもある通り、事前に環境を整えておくことが大切です。

こうした環境が実現すれば、例えばビジネスシーンにおいて、トップマネジメントが
監査レポートの「データが正確である」と理解し、自信を持って署名できるようになります。

低リスクでプロセスの変更を実施

データのエラーと、その問題の発生源を特定することは不可欠なステップであり、
これにより、問題の発生箇所を特定し、新たなプロセスの
変更による下流への影響を明確に理解したうえで、その問題に関連するプロセスの
変更を行うことが可能になります。

例えば、データ系列においては、作業に関与するすべての人々が正確に示されます。
これにより、データがどこから取得され、
どのように変更されたかを簡単に確認し、データの整合性を維持しながら変更を
管理することができます。

コンプライアンスには追跡済みのデータが不可欠

データセットの機密性と安全性を保護するためには、適用されたすべての変更が
承認されたエンティティによって、正当な理由に基づいて行われたことを
文書化することが肝心です。また、データの整合性を
維持するためには、誰が変更したかを記録するとともに、変更や更新に使用された
プロセスを記録することも重要です。

これによって、ビジネスプロセスを完了する際に、どのようなポリシーが適用されたかを
把握し、予期せぬトラブルやエラーを回避できるようになります。

データ移行を円滑化

膨大な量かつ多様な種類のデータを収集する際には、さまざまな問題が生じがちです。
例えば、データをどう保存するか、情報を必要とするすべての人がアクセスできるかどうか、こうした
保存方法が複数のソフトウェアプラットフォーム、地域、タイムゾーンで確実に機能するかどうか、といった問題があります。こうした際に、
データ系列のプロセスは、データがプラットフォームに左右されることなく
確実にシステムを移行できるようにサポートします。

データマッピングのフレームワークを作成

社員やステークホルダーは、適切なレベルのデータにアクセスできる必要があります。
データ系列は、メタデータの幅広い把握や、データマッピングの基盤を
構築を可能にすることで、このようなニーズを満たします。

データ系列を通じて、「データが信頼できるソースから提供され、ベストプラクティスに
従って変換され、安全に保存されているかどうか」を確認できるようになります。

データ系列が影響を与える重要なビジネス分野とは

データ主導の戦略的なビジネス上の意思決定

優れた意思決定を実現するためには、データ系列の検証が不可欠です。
現代の組織では、あらゆる部門がデータを活用しながら、
戦略的な意思決定を行っています。マーケティング、サプライチェーン管理、
製造、オペレーション、セールス、カスタマーサポートなど、あらゆる部門が
実地調査や運用データから得られる情報や洞察を必要としています。データ系列は、製品やサービスの開発など、
ビジネスの成長につながるあらゆる側面に影響をもたらします。

コンプライアンスとデータガバナンス

ビジネスにおいて、法規制の遵守や監査は避けられないものです。
データ系列の追跡により、コンプライアンスに関連するビジネスのすべての
コンポーネント、アカウントやイベントの正確な記録を維持できるようになります。データ系列は、
リスク管理のシナリオを改善し、すべてのデータ処理を標準化することで、
データプロセスが企業のポリシーに従うことを保証し、データがすべての規制要件を
満たせるようにします。多くの組織においては、
レポーティングの要件に、結果を裏付けるための詳細な報告データが含まれています。例えば、
財務部門においては、報告書に含める重要な指標や数値は、データで裏付けされたもので
なければなりません。そのため、データ変換の全履歴をさかのぼり、あらゆる問い合わせに対して
説明を行えるようにしておく必要が
あります。

データ系列のコンポーネント

データ系列の一部であるデータフローは、データと組織の以下のコンポーネントとの
関係性を示すものです。

  • 運用プロセス・ビジネスプロセス内のデータアプリケーション
  • 特定のデータセットを作成、処理、アクセス、削除、更新する際のさまざまな
    ビジネスロールと権限レベル
  • ネットワークセグメント
  • セキュリティマッピング
  • その他のITシステム

データ系列を用いたメンテナンスの技術的な利点

新しいテクノロジーに素早く適応

データ系列の追跡は、企業が新しいテクノロジーに遅れずに付いていくのに役立ちます。データの
構成要素や収集方法に変化はつきものですが、データ系列の
追跡を組み込むことで、新旧のデータセットを一貫した方法で組み合わせ、実用的な洞察を
得るために組織が継続的に使用できるフォーマットで保持することが可能と
なります。

IT システムとデータ移行を改善

テクノロジーが急速に発展している今日、ストレージシステム間のデータ移行は
不可避なものとなっています。新規のサーバーやソフトウェアに
データを移行する際、移行元と移行先のシステム間でデータの系列を追跡することで、
IT部門がより簡単にデータを移行できるようになります。

コンプライアンスまたはセキュリティの問題を特定

データ系列は、データ処理の各段階で特定のオペレーションを
文書化・分析することで、エラーやコンプライアンス、セキュリティ違反を
特定します。

データクエリの最適化

データ系列を利用すれば、ユーザーのクエリ、データのフィルタリング、
データセットの結合などのクエリの履歴を追跡することができます。こうしたすべてのクエリに加え、データウェアハウスや
データベースから生成される自動レポートについても、データ系列を通じて追跡や検証を行うことが肝心です。
系列データは、クエリを最適化して最良の結果を得るのに役立ちます。

データ系列の手法

組織の戦略的・構造的データセットにデータ系列を適用するにあたっては、
以下のような技法が主に使用されます。

パターンに基づくデータ系列

メタデータの重要なパターンを検索し、データ系列の調査を実行する手法であり、
さまざまな
データセット内のテーブル、ビジネスレポート、データ列を評価し、冗長性を
示す類似点を見つけ出します。類似性の高い列とそれに対応する値を見つけた後、
データ系列図内でそれらをリンクさせ、データのライフサイクルの
さまざまな段階を説明します。この手法には、
データベースの技術に左右されず、アルゴリズムや技術の進歩に関係なく実行することが
できるという利点がありますが、データ処理のロジックが
プログラムコードに埋め込まれている場合はアクセスできず、人間が読み取ることのできる
メタデータのみをクロールすることができます。

解析によるデータ系列

データの変換ロジックをリバースエンジニアリングすることで、
エンドツーエンドのデータ追跡を実現する、
より高度なデータ系列手法です。データの変換や変更に関わるすべてのプログラミング言語や
ツールを理解する必要があるため、非常に綿密かつ包括的な
作業となります。

データのタグ付け

データのタグ付けは、データの変換や移動に使用されるツールに一貫性のある
「クローズドデータシステム」において、最も効果的な手法です。この手法では、
変換ツールやエンジンがデータに識別可能なマーク(タグ)を付けることで、
エンドツーエンドでの追跡を行います。

自己完結型データ系列

自己完結型データ系列は、処理ロジック、マスターデータ管理、
ストレージを含む自己完結型のシステムやデータ環境内で最も効果的な
手法です。例えば、データレイクでこの手法を用いると、
データレイクがデータサイクル全体のリポジトリとなり、
こうした自己完結型のシステム内のデータに容易にアクセスできるように
なります。

データ系列と他のデータプラクティスを組み合わせる

データ系列は、堅牢なデータプロセスを実現する上での1つのステップすぎず、優れたデータ管理を実現するためには、
他のさまざまな自動化技術、ソフトウェア、手法を組み合わせる
必要があります。こうした他の手法を取り入れることで、データ系列とともに堅牢な
フレームワークを形成できるようになります。

例えば、データ分類は、機密性の高いデータや重要なデータ、
または何らかのコンプライアンスが必要なデータを検索するために使用されます。データ分類はデータ系列と連動して、
データのライフサイクルを調査し、整合性やセキュリティの問題を特定し、
その解決を支援します。

データの基盤を整理する

データの利用環境は、解決への対策を講じない限り、改善されることは
ありません。収集されるデータの量と処理速度は増加しており、これらのデータを
管理する法律や規制もますます厳しくなっています。そのため、こうした状況への対処に向けて、最適なデータ管理ソリューションを見つだすことが急務となっています。Alteryxは、強力なデータ分析・管理ツールにより、あらゆる
ビジネスにおける問題解決をサポートしています。

データが保護・整理されておらず、系列の追跡を行うことができない状態が
続けば、重大なミスや罰金へとつながり、お客様の信頼を失うことにも
なりかねません。Alteryxのデータ品質管理ツールによるデータの保護と
整理、データガバナンスのための明確なデータ系列の作成について興味をお持ちの方は、
ぜひお気軽にお問い合わせください。データの一元化とカタログ化、データディスカバリーの効率化、
作業のコラボレーションとデータ共有の促進により、データセットの
信頼性を確保するソリューションでお客様のビジネスをサポートします。