Alteryx のオンラインイベントである Alter.Next 2022 において、歴史家、哲学者、ベストセラー作家として知られるユヴァル・ノア・ハラリ教授が登壇し、データとアナリティクスに倫理を取り入れるべき理由とその方法について解説しました。 今回は、ハラリ教授がセッションで取り上げたホットなトピックのいくつかをご紹介します。
ハラリ教授は、思慮深く、時には挑発的な思考法によってテクノロジーが社会に与える影響を探求する、数々の受賞歴に輝くエキスパートであり、 その著書はビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグなどのテクノロジー業界の重鎮からバラク・オバマなどの政治指導者まで、幅広い層のトップから支持されています。
Alteryx:人々がデータを制御できるようになれば、社会に大きな影響を与えることが可能となり、コード開発者やエンジニアがこれからの社会を導く哲学者となるとのことですが、これについて、詳しくご説明いただけますか?
ハラリ教授: 自動運転車を思い浮かべてみてください。自動運転車の前に子供が飛び出してきたとします。そして、その子供をひかないためには、ハンドルを切り、近くにいる高齢の女性を巻き添えにするか、後部座席で寝ている車の持ち主の命を危険にさらすしかないとします。自動運転車はどう判断すべきでしょうか?
自動運転車を走らせるためには、コード開発者がこうした判断を下さなければなりません。アルゴリズムをプログラミングする必要があるのです。そして、驚くべきことに、アルゴリズムは99%もの確率でコード開発者が下した判断に従うため、コード開発者にかなりの重責がのしかかることとなります。
Alteryx:データと分析は、どのような危険をはらんでいるのでしょうか?たとえ悪い意図はなかったにしても、データと分析が、予期せぬ悪い結果を招いてしまうことはありますか?
ハラリ教授: 人類史上初となるデジタル独裁国家が誕生する恐れがあります。人々を24時間体制で追跡し、そのデータを分析し、分析した情報に基づいて、ある種の全体主義社会が形成されるようになるかもしれません。このような社会では、プライバシーはまったく存在せず、何を考え、何を感じているかを徹底的に把握されます。
もう 1 つの大きな危機が、データによる植民地化です。 もはや他国を支配するのに、軍隊を送り込む必要はありません。 データを持ち出しさえすればよいのです。 世界中の大部分のデータが奪取され、強豪国の中枢に送られ、そのデータによって、高度なテクノロジー、AI、アルゴリズム、スマート機器などが開発され、それらがデータ弱小国で売られるようになる状況を想像してみてください。
このような状況が近年急速な進展を見せており、そのシナリオが秘めている可能性は恐ろしいものですが、決して避けられないものでは ありません。 人々、エンジニア、技術者、起業家などが下す決断にかかっているのです。
Alteryx:テクノロジーによって、人類は今後、誤った方向に進んでしまうのでしょうか?
ハラリ教授: いいえ。テクノロジーの活用法は1つに限定されるわけはありません。ナイフは時として人を殺める凶器になりますが、野菜を切ったり、命を救うこともできます。ナイフの役割は1つではありませんし、
テクノロジーにも同じことが言えます。AI、ビッグデータ、監視技術の使用によって、史上最悪の全体主義社会を形成することも、平等で繁栄した社会を形成することもできます。すべてが私たち次第であり、どのようなツールを生み出すかは、私たちが決めることができるのです。
そして、その力をどう活かしていくかが大きな課題となります。
Alteryx:絶え間なく変化する世界において、新しいことをより簡単に学ぶ方法はありますか?
ハラリ教授: 自分ひとりで実現できる変化には限界があります。しかし、多くの人とつながれば、大きな変化をもたらすことが可能になります。これからを生き抜くためには、他者とのこまめな関わりが不可欠です。自分だけですべてを乗り切ろうとする必要はありません。
また、自分自身をもっと良く知ること、自分が何者なのか、自分の心や体に何が起きているかを把握することが肝心です。 これこそが、生涯を通じて変化し続け、今後ますます脅威となるであろう心理的操作から身を守るための鍵となるからです。
Alter.Next 2022 の感動を再び味わいませんか?