2020 年初頭から猛威を振るう新型コロナウイルスは、データサイエンスと ML モデルにも多大な影響をもたらしました。 パンデミックによって仕事の本質が根本的に変わり、ビジネスにおけるデータの活用が急速に拡大することとなったのです。
時代の急激な変化には目を見張るものがあります。
一方で、変わらない部分もあります。
アナリティクス、データサイエンス、機械学習(ML)のテクノロジーは急速に進化していますが、いくつかの基本原則は揺るぎないままです データ準備、クレンジング、プロファイリングの自動化から、自動機械学習(AutoML)や自動特徴量エンジニアリングまで、DSML プラットフォームの導入検討時には、考慮すべき多くの革新的な機能があります。
しかし、アナリティクスやAIへの投資を行う場合、ビジネスリーダーはテクノロジーのその先を見据える必要がありますテクノロジーは変化しますが、戦略を成功に導くための基本的な原則は変わりません。テクノロジー市場に少しでも身を置いたことがあれば、テクノロジーのトレンドの盛衰を目の当たりにされてきたことと思います。また、分析プロジェクトが失敗したこともあれば、大成功を収めたこともあるでしょう。成功するプロジェクトがある一方、頓挫するプロジェクトもあるのはなぜでしょうか?
アナリティクスやAIへの投資を行う場合、ビジネスリーダーはテクノロジーのその先を見据えなければなりません。
NVP Big Data and AI Executive Survey 2021の調査によると、92.2%の企業が、「データ主導組織に移行する上での最大の阻害要因は企業文化 (人材、プロセス、組織、チェンジマネジメント) である」と感じています。
このように考える企業が多いのはごく自然なことです。 こうした企業文化は、何年も前からずっと、組織の分析主導への移行を妨げ続けているのです。 しかし、一部の企業は、直感と時代遅れのプロセスにこだわり続ける企業文化を、アナリティクス、データサイエンス、ML を基盤とするデジタルファーストの環境に変える魔法を見つけ出しています。 こうした魔法は、リーダーが将来を見据えた投資を行うための 5 つの戦略を通じて大きな効果を発揮しています。
変革に成功した企業には、素晴らしい成果がもたらされます。International Institute for Analytics(IIA)が、さまざまな企業のアナリティクスの成熟度を比較したところ(分析主導ではない企業と分析主導型企業の比較など)、財務成長において次のような違いが見られました。
データおよびアナリティクスのリーダーとして、アナリティクスやデータサイエンスを成功に導く戦略を構築するためには、以下の事項を考慮することをお勧めします。
1. アナリティクスとデータサイエンスをビジネス戦略と一致させる
ありきたりに聞こえるかもしれませんが、プロジェクトが失敗する最大の原因の 1 つは、アナリティクスおよびデータサイエンスの専門家、社内の各部門、全体的なビジネス戦略の間で足並みが揃っていないことにあります。
まずは、事業戦略における事業目標と OKR(目標と主要成果)を明確化した上で、 OKR に関連する一連のイニシアチブ(プロジェクト)を定義していく必要があります。 次に、それらのイニシアチブに対応する KPI(主要業績評価指標)を作成します。 その上で、主要イニシアチブの達成に向けた分析プロジェクトを立ち上げましょう。
2. デジタル主導の意思決定から逆算する
主要なイニシアチブとプロジェクトチームが固まった後には、最終ステップである重要なビジネス上の意思決定から逆算してみる必要があります。リーダーは、このような取り組みによって影響を受けるビジネスプロセス全体に細心の注意を払わなければなりません。データおよび分析プロジェクトにおける目標は、会社に価値をもたらすことです。アナリティクスをデジタル主導の意思決定に取り込んでも、組織が行動を変えることができないのであれば、全く意味がありません。この点が見過ごされ、プロジェクトに悪影響を及ぼし、プロジェクトの従事者の士気を低下させるケースがあまりにも多いのです。
まずは、アナリティクスに基づいて処方的な行動を起こすことを前提に、分析ワークフローをビジネスシステムに組み込むことから始める必要があります。これを効果的に行うためには、組織全体で堅牢なチェンジマネジメントのプロセスを確立するとともに、 ML Ops戦略を採り入れていく必要があります。
3. 人をないがしろにしない
人は組織にとって最も重要な資産であり、さまざまな側面から考慮する必要があります。まず、企業が必要とする優れたデータサイエンティストが慢性的に不足しているという問題があります。幸い、こうした問題は、ADAPTプログラムのようなスキルアップの機会により解消しつつあります。
多くの大企業が、データリテラシーを高め、市民データサイエンティストになるために必要なトレーニングの機会を従業員に提供することで、既存の人材の強化と活用を推進しています。 市民データサイエンティストという役割が生まれた一方で、データとアナリティクスに従事する多くの専門家が、いまだにスプレッドシートによる手間のかかる反復作業に悩まされているという現状があります。
分析主導型の組織を強化するためには、それをサポートするコミュニティが不可欠です。 分析テクノロジーの導入時には、強固なコミュニティの形成にも力を入れるようにしましょう。 これによって IT 部門や高価なトレーニングプログラムの助けを借りずに、従業員がベストプラクティスを学んだり、課題を解決するためのコラボレーションを行ったりすることが可能となります。
4. 自動化で反復作業を排除
前述の「3」にも関連しますが、自動化は組織にとって非常に重要です。 システムやプロセスが複雑になればなるほど、自動化の必要性が高まることは歴史的にも明らかです。 今日のナレッジワーカーは、誰もが時代遅れの作業プロセスに辟易しています。 何度も何度も同じことを繰り返さなければならないからです。 そして、毎週「何が起こったか」という説明的なレポートを作成するのではなく、「何が起こりうるか」「次に何をすべきか」を探るためにドラッグ&ドロップでデータサイエンスモデルを作成するなど、何か革新的なことに自分のスキルを活用することを熱望しているのです。
多くの組織が、自動化の重要性を認識し、積極的に取り入れ始めています。ロボティック・プロセス・オートメーションから、チャットボット、ローコード/ノーコードのユーザーインターフェース、AIやMLに至るまで、反復的なプロセスが伴う場合には、特に自動化を採り入れるべきです。アナリティック・プロセス・オートメーションは、デジタルトランスフォーメーションというパズルにおける 1 つのピースのような存在です。そして、従業員がブレイクスルーを果たし、かつてなく革新的な問題解決を行うことを可能にします。
5. 技術的な考慮事項
前述のように、テクノロジーは従業員の満足度とビジネスパフォーマンスを向上させる確かな手段ですが、これまでの推奨事項に加え、次のようなことにも目を向けることが肝心です。 まず第一に、テクノロジーは直感的で、取っ付きやすく、使いやすいものでなければなりません。 どのテクノロジーのプロバイダーも、自社のテクノロジーは使いやすいと言うに決まっています。ですので導入前に、それが本当かどうかをまず試してみるべきなのです。
そうしたテクノロジーが、実際のビジネス上の問題を解決し、トップラインとボトムラインの成長を促すデータや分析パイプラインを構築するための強力なツールを備えているかどうかが重要です。
さらに、自動化機能が組み込まれており、デジタルトランスフォーメーションの促進に役立つ豊富なパートナーネットワークを利用できるかどうかも確認しましょう。そして、EvalML (※) のようなオープンソースプロジェクトを通じた自動機械学習機能を備えていることも肝心です。(※Pythonユーザーを対象としたEvalMLの解説動画にリンクしています)
ある航空会社の分析活用事例
ある航空会社のマーケティングチームの事例を見てみましょう。この航空会社のチームは、これまでマーケティングエージェンシーに依頼していた業務を内製化することに取り組みました。そして、直感的で使いやすい分析プラットフォームを通じて、マーケティングメールを分析し、顧客のニーズをより深く理解できるようになりました。EメールキャンペーンでA/Bテストを実施し、コピーを減らした結果、クリック数が50%増加し、コンバージョン数も15%増加しました。
しかし、成功はそれだけにとどまりませんでした。 拡張性に優れたプラットフォームを通じて、誰もが多くの学びを得て、組織の成長が促されることとなりました。そして新たに地理空間分析を活用し、インタラクションを 10% 増加させることができました。 また、十数個のワークフローを自動化したことによって、より革新的な作業に時間を費やせるようになりました。 さらに、予測機能の追加により、より多くのコンバージョン率(従来の 3 倍程度)を得られる可能性のあるマーケティングセグメントを特定することができました。 結果として、コンバージョン率が 20% アップしたのです!
まとめ
テクノロジーは重要ですが、結局は人間、プロセス、テクノロジーの 3 つのどれが欠けてもうまく行きません。 ビジネスリーダーが分析プロセスに着手する際は、ビジネス戦略を明確に理解し、それを組織のデジタル主導の意思決定にどのように結びつくかを把握することが大切です。 また、今後のビジネスプロセスの変化を理解していくことも重要です。
次に、さまざまなプロジェクトや取り組みに組織全体を巻き込むようにしましょう。 従業員に明確なスキルアップパスを提供することも忘れないようにしましょう。結局のところ、皆様のビジネスを最もよく理解しているのは従業員であり、チャンスを提供することで見違えるような改善がもたらされるようになります。
そして、いよいよ 自動化を容易に。 自動化を容易に。 使いやすく、柔軟性があり、革新的なワークフロー作成に役立つ数百のビルディングブロックを備えたテクノロジープラットフォームの導入を検討してみましょう。 そして、テクノロジーを支える、強固なコミュニティの形成にも力を入れましょう。