現在のビジネスでは、採用の判断から企業の買収に至るまで、あらゆる場面でデータが求められています。データが「デジタルゴールド」と呼ばれるほど重要視されていることから、多くの企業が、さまざまなシステムを導入し、データを収集しています。たとえば、CRM(顧客管理システム)、ERP(基幹業務システム)、HRIS(人事情報システム)、CMS(コンテンツ管理システム)などがあり、数多くのタッチポイントややり取りを通じてデータを集め、信頼できるデータ基盤を構築する取り組みが進められています。ただし、残念ながら、多くの企業ではデータにアクセスできるのは、IT部門やデータ分析チームなど、技術的な知識を持つ人々に限られているのが現状です。
データの民主化とは、ナレッジワーカー(高度な専門知識を有する労働者)や意思決定者など、組織内のメンバーがより多くのデータにアクセスできるようにし、より良い意思決定を支援するという考え方です。
しかし、それだけで十分でしょうか?
ローデータや表面的なデータから得られる情報には限界があり、データを集約して深く分析しなければ、真に有益なインサイトは引き出せません。
私たちは、データの民主化はビジネスを本質的に強化するための第一歩に過ぎないと考えています。分析の民主化とは、社内全体のユーザーにセルフサービスツールを提供し、より深いインサイトを引き出し、より迅速で的確な意思決定を行えるように支援する取り組みです。このブログでは、分析の民主化の3つの側面を解説し、セルフサービスツールを活用してデータを最大限に活用する方法をご紹介します。
分析の民主化とは?
分析の民主化においては、組織内のビジネスユーザーが分析ツールと必要な知識を活用し、一般的なダッシュボードや概要では簡単に得られないインサイトを発見できるようにすることで、ビジネスの強化を図ります。分析の民主化を実現するためには、データの民主化、セルフサービス型データ分析ツールへのアクセス、スキル向上の3つの要素を押さえる必要があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
データの民主化:データへのアクセスの拡大
2024年の意思決定インテリジェンスレポートでは、2,800人の企業経営者を対象に、テクノロジーをどのように意思決定に活用しているかを調査しました。その結果、回答者の圧倒的多数(80%)が、データへのアクセスによって意思決定の質が向上したと答えていることが明らかになりました。
しかし、データアクセスをもっと多くのビジネスユーザーに広げることは意義のあることなのでしょうか。特に、データ保護を担うITリーダーやデータエンジニアは、組織全体にデータアクセスを広げることは大きなリスクを伴うと危惧するかもしれません。実際に、アクセスする人が増えるほど、セキュリティリスクやクラウドのコスト、データの整合性の問題など、さまざまなリスクが高まる可能性があります。
そのため、データのガバナンス(管理)とデータの民主化(アクセスの拡大)は、相反するように見えるかもしれません。しかし、実際にはデータにアクセスし利用する人が増えることで、ビジネスにより多くのメリットがもたらされるようになります。例えば、ユーザーの利用率が向上したり、データの品質が改善されたり、より適切なビジネスインサイトが得られたりするようになります。
実際に、民主化とガバナンスは、どちらかを取るというものではなく、両立できるものです。
ガバナンスは、セキュリティ制限やユーザーのアクセスを妨げるものではなく、データアクセスを適切に拡大するための包括的な枠組みです。効果的なデータガバナンスには、以下のような手順が含まれます。
- データアクセスポリシーの決定:適切なロールに適切なレベルの権限が与えられていますか?
- データ品質基準の確立:組織全体でデータの形式を統一できていますか?精度に問題はありませんか?どのように利用されていますか?
- データプライバシー規制への対応:データは個人のプライバシーやGDPRのような第三者規制を遵守していますか?
ガバナンスとは、データにアクセスするユーザーが、スマートかつ安全に利用できるようにするための仕組みであり、データの民主化と組み合わせることで、ビジネスユーザーが目標を達成するための大きな価値を生み出すことが可能になります。
データの民主化を改善するには
データへのアクセスを拡大する際には、適切な権限レベルを維持することが重要です。また、データを実際に使うユーザーがデータに簡単にアクセスできるだけでなく、管理者がライセンスの追加やデータの使用状況の監視、権限の付与や制限、システムの正常な運用を簡単に行えるツールを探しましょう。以下のような業務を効率化できるガバナンス機能を優先することをお勧めします。
- 視認性:ユーザーの操作状況を簡単に確認したり、実行中やスケジュールされたジョブをすぐに把握したりできますか?
- 拡張性:ユーザーがデータやワークフローの詳細を知らなくても、事前承認されたアプリを使って簡単に疑問を解決できる環境を構築できますか?また、データソリューションには、各ユーザーに適切な権限を割り当てるロールベースのアクセス制御が備わっていますか?
- データ系列:データが各段階でどのように処理されたかを追跡し、ワークフローの簡単な要約を得ることができますか?複雑なSQLやローカルの表計算ソフトを掘り下げる必要なく、データの流れを理解できていますか?
- 好みのUI:ビジネスビジネスユーザーがコード不要のツールを使用してデータを扱う場合でも、IT担当者や管理者が必ずしも同じプラットフォームを使用する必要はありません。もしご自身がSnowflakeを使用しているのであれば、Snowflakeから他のデータツールやSnowflake自体の操作状況をモニタリングできるか確認してみてください。
セルフサービス分析へのアクセス拡大
昔から度々問題となってきたことですが、IT部門やデータ分析チームではリソース上の制約から、ビジネスユーザーがデータからインサイトを得たり、ダッシュボードを作成したりする支援に割ける時間が限られており、誰を優先してサポートするかを判断しなければなりません。
一方で、データエンジニアリングやデータ分析、データサイエンスの専門家は、月次のキャッシュフロー予測や在庫計画といった具体的な業務に詳しいとは限らず、ビジネスの専門家ほど、各部門の業務に精通していない可能性があります。その結果、IT部門がデータインサイトの主要な提供源となっている組織では、すべてのビジネスチームが必要なタイミングで適切なインサイトを得られなかったり、提供されたインサイトがエンドユーザーにとって最適ではなかったりといった問題が起こりがちです。
そこで役立つのがセルフサービス分析です。
セルフサービス分析ツールは、コード不要で直感的に操作できるだけでなく、コードに対応した柔軟なツールでもあり、技術的な知識が十分でないビジネスユーザーでもデータに基づくインサイトに簡単にアクセスできるように設計されています。Alteryxのようなセルフサービス分析プラットフォームを活用すれば、マーケティング担当者や営業担当者、その他の専門家が自分のデータを掘り下げ、より詳細な質問を投げかけ、より良くビジネスを進めることができます。
例えば、マーケティング部門はデジタルキャンペーンを最適化し、顧客プロファイルに基づいて生涯価値が最も高い顧客をセグメント化できます。また、営業部門はリード(見込み客)にスコアを付け、最も有力な顧客に焦点を当てたり、クロスセル(他製品の提案)やアップセル(より高額な製品の提案)の機会を特定することができます。
セルフサービス分析の導入で押さえるべきポイント
- 使いやすさと拡張性を優先:まずはビジネスユーザーを第一に考えましょう。その多くは、データ分析の経験が少なく、専門的なトレーニングを受けていないことが一般的です。ビジネスユーザーがすぐにデータにアクセスし、簡単に使い始められるセルフサービス分析ツールを選びましょう。
- 既存のインフラと容易に連携できるか:分析の民主化は、IT部門やデータチームへの負担を軽減するための取り組みでもあります。そのためには、Salesforce、Workday、Netsuite、Tableau、Snowflakeなど、社内のインフラやアプリケーションとスムーズに連携できるソリューションを選ぶことが重要です。これにより、導入や統合時のITやデータチームへの負担を軽減できます。
- 将来の分析ニーズやAIも考慮する:セルフサービス分析ツールの機能は、特に生成AIの登場によって急速に進化しています。ビジネスユーザーがデータからインサイトを迅速かつ容易に得られるように、AIの効果的な導入で定評のあるセルフサービス型の分析ソリューションを選ぶことをお勧めします。
スキルアップ:従業員の成長ニーズ
従業員は自分を成長させ、スキルを高めたいと考えており、アップスキルの機会は、今や職場に欠かせない要素となっています。アメリカ心理学会が2023年に実施した「Work in America」の調査によると、91%の従業員が「学び続ける機会が得られる職場は非常に重要、またはある程度重要」だと感じています。
こうした成長への強い意欲は、急速に変化するスキルのニーズとも一致しています。あるレポートによれば、「2027年までに6割の労働者が再トレーニングを必要とするが、現時点で十分なトレーニング機会を得ている労働者はその半数に過ぎない」ことが指摘されています。
スキルアップは、職場環境の急激な変化や深刻化する人材不足を解消する鍵となるだけでなく、従業員がセルフサービスツールを使いこなしてデータを理解するためにも不可欠です。たとえデータや分析ツールにアクセスできたとしても、適切なトレーニングがなければ、それらをうまく活用することは難しく、最初からつまずいてしまうことになります。スキルアップにはさまざまな方法がありますが、データの民主化を進めるためには、データリテラシーの向上と分析の成熟度を高めることが重要です。
データリテラシーとは、データを使って分析し、コミュニケーションを取る能力であり、データリテラシーが高いほど、ビジネスの文脈でデータを適切に理解・解釈し、行動に移すことができ、業績の最適化につながります。データリテラシーの向上が企業の業績改善に寄与することは、The Data Literacy Projectの調査でも明らかにされており、データリテラシーを高めることで、リテラシーが低い企業と比較し、企業価値が3億2000万ドルから5億3400万ドルに増加すると予測されています。
一般的に、組織が強力な分析力を持つ場合、分析の成熟度が高いと評価されますが、この考え方は個人にも当てはまります。特に、分析の成熟度を能力ごとに評価する場合には、個人の成熟度も重要視されます。
分析の成熟度のステージが進むにつれて、より良く強力なインサイトが得られるようになりますが、その分難易度も上がり、専門的な知識が求められるようになります。こうしたスキルの向上には時間がかかりますが、それに見合った大きな見返りを得ることができます。例として、DoorDash社のチームはAlteryxを使用して数百万ドルの節約に成功しました。
従業員をスキルアップさせる方法
スキルアップにはいろいろな手段があります。たとえば、ハッカソンを開催したり、UdemyやMaveryx Academyなどのオンライン学習プラットフォームで従業員に学習の機会を提供することなどがあります。しかし、最も大切なのは、従業員自身がその取り組みに前向きで、継続的に努力できるように後押しすることです。以下に、スキルアップを進めるためのアイデアをいくつかご紹介します。
- 従業員の成長を支援する:スキルアップの取り組みには、経営陣、管理職、そして従業員全員が時間や予算の面でサポートすることが重要です。
- COE(センター・オブ・エクセレンス)の設立:人事部門、データ分析チーム、IT部門など、部門横断的なメンバーで構成される専門チーム(COE)を結成し、全社的に分析力を高める取り組みを進めることをお勧めします。こうした専門チームを組むことで、リソースやベストプラクティスを共有し、メンバー同士が学び合うことで、相乗効果が期待できます。
- エキスパートとの提携:Alteryxでは、多くの企業でセルフサービス型データ分析の導入をサポートしてきました。当社のServices Success Bundleでは、専任のチームが従業員の皆様や企業を対象に、トレーニングやワークフローの最適化、新しい部門への導入支援を行っています。
- コミュニティに参加する:最後に、あなたの組織は一人でやる必要はない。 従業員にデータ分析のコミュニティへの参加を促すことも有効です。Maveryx Communityには40万人以上のメンバーが参加しており、フォーラムやさまざまなスレッドで他のデータチームがどのように問題を乗り越えているかを参考にしたり、質問を投稿して実践的なアイデアや解決策を得ることができます。
データ分析を民主化し、業務の効率化を進めませんか?
データ分析を誰でも使えるようにするには、データへのアクセスとセルフサービスのツール、そしてそれらを使いこなすための知識が必要です。適切な分析ツールを導入すれば、このプロセスはさらにスムーズになります。
プログラミング不要で簡単に使えるエンタープライズ向けの分析プラットフォームであるAlteryxを使えば、あらゆるビジネスユーザーがデータに簡単にアクセスしてデータ準備を自動化し、ドラッグ&ドロップで分析ワークフローを構築し、新しいインサイトを発見できます。さらに、最新のセキュリティ基準と認証機能により、データや顧客情報を安全に保護することが可能です。
Alteryxのセルフサービス分析プラットフォームを使えば、社内の誰もが自在に問題解決に取り組めるようになります。
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