ゴルフ界のスーパースターでありLPGAを象徴するプレーヤーとして知られるミシェル・ウィー氏は、史上最年少のわずか10歳で全米女子アマチュア選手権への出場を果たしました。「その後は、順調にゴルフの腕を上げ、すぐにプロトーナメントに参加するようになりました。そして12歳の時に、初めてLPGAツアーの参加資格を手に入れたのです」とミシェル・ウィー氏は語ります。そうした中で、効率的に上達し、パフォーマンスを磨き、成長し続けるためには、データと分析の活用が不可欠であることに気づいたそうです。
統計学の教授であった父親のもとで育ったミシェル・ウィー氏は、ゴルフにおいて統計が欠かせないものであることを早い段階から認識していました。 当時、表計算や統計はウィー氏の得意分野ではありませんでしたが、頼りにすべき重要なものだということが常に頭の片隅にあったのです。 その後、ウィー氏は、投資家として、またビジネスウーマンとしてキャリアを広げるうちに、データ分析への知識を深め、活用し始めました。
「試合では、データや分析を多用する一方で、感覚も大切にしています。ですので、データと感覚を融合させることを重要視していました」と、ウィー氏は説明します。また、ウィー氏の試合へのアプローチが進化するにつれて、使用する分析やデータの内容も変化していったそうです。ある時は、より安定したプレーの実現を目指して統計学に力を入れ、フェアウェイキープ率80%、グリーンキープ率80%を維持し、3パット数を減らすことを目標としていたそうです。
ゴルフにおける分析と変化
昨今、ゴルフを取り巻く環境は大きく変化し、90億ドル規模の産業は変貌を遂げています。ゴルフの主な指標には、飛距離とストロークスゲインド (SG、平均打数から実際の打数を差し引くことで得られる値) の2つがありますが、現在は多くのゴルファーがストロークスゲインドを利用して練習や戦略を練り直し、弱点の克服に役立てています。そして、これらの2つの指標はいずれも、データ分析を活用することで改善できます。今日のゴルフプレーヤーはボールをより遠くへ、より正確に打てるようになっています。20~30年前は、ロングホールを得意とするプレーヤーは少なく、精度も今ほど高くはありませんでした。
しかし、今日はデータから得られたインサイトをパフォーマンス改善に役立てることで、飛距離や精度が飛躍的に向上しています。 ウィー氏は、「すべてはパッティング、ショートゲーム、ウェッジゲーム、スコアリングクラブ次第です」と語ります。
ゴルフにおいてデータ統計や分析の重要性が増している中、プレーヤーを支援するさまざまなアプリやテクノロジーが登場しています。 そして、多くのプレーヤーが、自身の統計情報を把握するために、サードパーティーのサービスを取り入れています。 例えば、ウィー氏が利用しているSportsbox AIは、8つの異なるカメラアングルを介し、スイングを記録する3Dデータテクノロジーアプリを提供しています。
ウィー氏は、怪我からの回復期などに、こうしたAIベースのツールに頼りに、回復期におけるトレーニングの負荷が十分か、あるいは高すぎないかをチェックしています。 さらに、ツールで動作を分析し、強みや弱点を把握することで、回復期やトレーニングのプロセスにおける指針として役立てています。
また、他のデータや分析の身近な活用例として、グリーンの傾斜を0.1度単位でレーザー計測して作成するグリーンマップがあり、多くのプレーヤーに利用されています。ウィー氏は次のようにも語ります。「全米ゴルフ協会は、ゴルフコースで使用できるテクノロジーに制限を加えようとしています。今日は膨大なデータが手に入り、分析手法も多様化していますので、やり過ぎになりかねないからです。私は現場主義ですが、直感とデータの双方をうまく活用するように心がけています。自分が感じたことが、実際にどのようにデータで裏付けられるのかを知ることに魅力を感じています」
データ活用によるファン体験の向上
また、ウィー氏は、ゴルフファンとメディアの双方が、視聴者体験の一環として、より多くのデータや分析を必要としていると語ります。ファンやメディアは、「A選手のティーショットが好調です」という発言を裏付けるデータを求めています。その理由を知りたいだけでなく、データや分析に基づいた説明も期待しているのです。
近年ゴルフの人気はますます高まっており、若年層や女性のプレーヤーも増えています。こうしたことを背景に、(アメリカでは) TopgolfやPopstrokeのようなエンターテインメント性の高いゴルフスポットが人気を集めています。また、パー3コースやナイターゴルフも増えています。ウィー氏は、次のようにも語ります。「PGAツアーは、観客の皆さんに、とことん楽しんでいただく娯楽性に富んだイベントです。PGAやLPGAのツアーに参加する選手はその点をよく理解しており、自分たちをエンターテイナーと捉えています。ですので、テレビ番組への出演時にも、楽しんでいただくことを意識しています」
データをより広く活用
ウィー氏は、ゴルフがさらに身近なものになることを願っており、 現在はSportsbox AIとの連携に力を入れていると語ります。Sportsbox AIは3Dテクノロジー企業であり、プレーヤーが自分のスイングやパフォーマンスについてのさまざまな情報を得られるモバイルアプリを手頃な価格で提供しています。 「かつて3Dデータは高価でしたので、資金力のあるユーザーや、トップゴルファーやコーチにしか手が届かないものでした」とウィー氏。
また、ビジネスウーマン、投資家として、まだ学ぶべきことは多く、自信をつけるために、金融情報サービスを提供するPitchBookも有効活用しているそうです。「投資についてはまだ勉強中ですし、自分の感覚が常に正しいかどうか自信がありません。PitchBookでは、必要なデータをすぐに引き出せますし、調子がいいと思ったら、裏付けとなる数字を見て本当にそうなのか判断することができるので、非常に重宝しています」。
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