この 10 年間で、組織がプロセスを管理し、ERP(統合基幹業務)システムで取得した取引データを記録する方法が、飛躍的な進化を遂げました。 このような変化は、クラウド化の影響によるところが大きく、クラウドシステムは一般的に、オンプレミスのシステムよりも更新頻度が高く、メンテナンスの必要が少なく、パフォーマンスや使い勝手にも優れているため、着実に移行が進んでいます。
今日のデータアーキテクチャは、ERP システムの分析機能を強化してきた多くの段階的なステップの集大成と言えます。 また、データアーキテクチャの進化によって、ERP システムがさまざまな記録システムにある情報を自動的に取り込めるようになったことから、ERP システムに分析機能(複数の個別ソースのデータを取り込むシステム)が標準装備され、分析やレポートの幅に広がりが生まれることが期待されています。
数十年前までは、ERPシステムに対する不満は当たり前のようにありました。1990年代に初めて登場したERPシステムは、当時「データを入れることはできても、出すことはできない」データのブラックホールだと揶揄されていました。しかし、Alteryxが実施したOffice of Finance Benchmark Research(財務部門のベンチマーク調査)では、今日の3分の2(66%)の企業が、「ERPシステムから有用な情報を得ることは簡単、または非常に簡単である」と回答しています。レポーティングや分析機能が、とりわけ個人が特定の役割における業務ニーズに合わせて設定できるダッシュボードという形で、ERPシステムの既成の機能に追加されるケースが増えています。ユーザーエクスペリエンスが向上し、必要な情報を簡単に利用できるようになっただけでなく、ユーザーは例外管理もできるようになっています。例外管理では、問題が発生した際に管理者が調査する必要はなく、即座に把握できます。
さらに、このベンチマーク調査では、回答者の 81% が「ERP システムがうまく機能している、または非常にうまく機能している」と回答しています。 ERP システムでは、バッチプロセスが排除され、インメモリ処理を使用することにより、「継続的な会計」が可能となっています。 これにより、会計プロセスにおいて、時間のかかる戦術的な問題を解決して時間を節約し、より戦略的な業務に集中できるようになりました。 機械的で反復的な会計プロセスを、エンドツーエンドで継続的に自動化することで、 作業効率が向上するだけでなく、重要なデータの整合性も確保されるようになります。 データの整合性の欠如は、付加価値の低い、時間のかかる作業を多く生み出す原因となっています。 継続的な会計では、会計の作業負荷を均一化させ、ボトルネックを解消し、会計作業をいつ、どの順序で実行するかを最適化することができます。
ERP システムに対する不満は、一部は解消されたものの、いまだに根強く残っています。 例えば、35% の回答者が「(ERP システムが)期待通り使いやすい」と答える一方で、60% が「改善が必要」、4% が「使いにくい」と回答しています。
「ERP システムは導入が難しい」という声をよく聞きますが、その本質的な理由は、複雑で部門横断的なプロセスを扱うために、厳密な管理が必要となるからです。 また、不要なカスタマイズを排除し、システムに組み込まれたベストプラクティスを採用すれば、クラウドの導入をより早く、より低コストで実現できます。 例えば、一般的な食品・飲料カテゴリーではなく、ビールの醸造所向けに特化したシステムなど、マイクロバーティカル(業界特化型)ERP を提供するプロバイダーが増えています。
ここ 10 年のイノベーションにより、企業は既存の機能を最大限に活用しながら、財務・経理部門の業務を再定義する新しいテクノロジーを取り入れることができるようになりました。 今後 10 年間の情報技術が、過去 60 年間の情報化時代よりも組織のマネジメントに大きな影響を与えることは想像に難くありません。
大企業では数十年もの間、複数の ERP システムの扱いに悩まされてきました。 Alteryx が実施した次世代 ERP のベンチマーク調査(Next-Generation Enterprise Resource Planning Benchmark Research)では、1,000 人以上の従業員を抱える組織の 69% が複数のプロバイダーの ERP システムを導入していることが明らかになっています。 複数のシステムは、統合システムで管理されることが多く、これにより複数のシステムの会計取引データを組み合わせて、本社レベルの財務諸表を作成する作業を簡素化できるようになっていますが、 そのためには時間のかかる処理を月単位で実施する必要があります。 その代わりとなる「ユニバーサルジャーナル」では、各 ERP システムから中央のシステムにすべての取引を転記し、リアルタイムで集計・確認することができます。 さらに、 減価償却、発生、および類似する名目項目を日次で計算(必ずしも転記の必要なし)することで、期間ごとの本社、部門、地域の財務諸表を利用できます。 これらは現代のテクノロジーを持ってすれば理論的には実現可能なことではあるものの、コスト面がネックとなるため導入が進んでいません。
また、今日は人工知能(AI)が過剰に宣伝され、AI が財務・会計部門にもたらす影響も過大に評価されているきらいがあります。 AI といっても、ロボットが業務のすべてをこなしてくれるわけではありませんが、AI の機械学習を活用すれば、会計担当者を悩ませる機械的な作業をなくすことは可能です。 例えば文書のスキャンや音声認識などでは、すでに AI が活躍しています。 低品質なデータは、AI システムのトレーニングや導入の大きな障壁となりますが、AI はすでに大規模なデータクレンジングの自動化にも活用されています。 近い将来、AI によって ERP システムへの入力時点でのデータの正確性がサポートされるようになり、取引に関する必要な情報の欠落などのエラーや漏れを、レコードが入力される前にシステムで検出できるようになることが考えられます。 すでに利用されている自然言語処理では、人が実行したいタスクを話したりタイプ入力したりすることで、必要なトレーニングを最小限にとどめられるようになっています。 こうした AI 主導での数々の小さな進歩により、会計部門の業務が、時代遅れの経理処理ではなく、より分析的でプロアクティブな業務へとシフトしていくことが期待されています。
クラウドベースの ERP システムは新しいものではありませんが、その本来の有用性はまだ十分に発揮されているとは言えません。 クラウドでは、従業員がソフトウェアを保守する必要がない、コンピューティングとストレージのコストが分散される、手頃な価格でより良いパフォーマンスを提供できるなど、特に中小企業にとって多くの利点があります。 クラウド環境では、プロバイダーがシステムの動作環境をより柔軟にコントロールできるため、ユーザビリティやユーザーエクスペリエンスの向上がさらに容易となっています。 たとえば、B2B 取引を簡素化したり、付加価値の高いビジネスサービスを提供したりするなど、幅広いサービスを展開できるため、 こちらに関してもリソースの少ない中小企業ほど、より多くのメリットを期待できるでしょう。
企業は平均して 10 ~ 12 年ごとに ERP システムを変更していますが、もっと長く使用している企業も多くあります。 ERP システムの変更はコストがかかる上に難易度も高めですが、上級管理職、特に CFO が、既存のシステムがビジネスのニーズを満たしているかどうかを評価し、新しいソフトウェア(特にクラウドベースのアプリケーション)で他に何が実現できるかを検討してみることをお勧めします。
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