360度の分析:過去と未来を見渡す

テクノロジー   |   Taylor Porter   |   2020年1月21日 読了時間の目安:20
読了時間の目安:20

2010年1月のことです。米国では大不況が終わりつつあるも、世界経済はまだ回復途上にあります(家計の財布の紐も同様です)。テクノロジーの世界では、「iPad」だか「iPal」などと呼ばれる画期的なタブレットをAppleが発売するという噂を耳にしたばかりですが(どっちの名前だったかは覚えていません)、iPhone 3を大型にしたものに500ドルも費やす人のことを理解できないでしょう。

皆さんはまだご存知ないかもしれませんが、データサイエンスと分析の業界では歴史的な変化が起こっています。テクノロジーと文化の変革により、データはかつてないほど広く行き渡るようになり、それに伴って、データを理解し、経済、ビジネス、社会問題の解決に活用する必要性が高まっています。

AlteryxのCEOであるDean Stoeckerは、この革命を次のように表現しています。「農耕時代は人類を養い、人類がいかに地球に依存しているかを示すデータをもたらしました。工業化時代は、人間が地球以外のものとどのように相互作用するかについてのデータを生成する製品を製造するのに役立ちました。情報化時代は、人間が物理的にも仮想的にもデータを拡散させることになりました。そして今、第4の時代は分析の時代です。私たちがこれまで直面したあらゆる問題を解決するために、あらゆるデータを理解することが人間の使命となっています。これは面白くなりそうです

分析の過去

データがコモディティ化

2010年代初頭には、誰もデータを「珍しいもの」とは言わなかったでしょう。IDCによると、2010年には世界で年間1ゼタバイト(ZB)のデータが生成されていました。しかし、このわずかなZBは、2018年に生み出された33ZBや2025年に生み出されると推定される175ZBに比べれば、大河の一滴に過ぎません。

少し視点を変えてみると、1ゼタバイトは1兆ギガバイト、つまり10垓バイトであり、2019年に人類が行った呼吸の量(7垓7千兆回)よりも多いことになります。数学に長けた人ならお分かりかもしれませんが、これは、1ZBが175ZBになるとしたら、17,400%増となります。宇宙船エンタープライズ号でさえ、この規模のデータを探索するには新次元のチャレンジ精神が必要でしょう。

では、何がこの驚くべき成長を引き起こしたのでしょうか?

第一に、データの急増です。いくつかの要因が挙げられますが、最大の要因はモノのインターネット(IoT)の登場でしょう。突然、すべてのIoTデバイス(Wi-FiやBluetooth、携帯電話などの周波数ネットワークを通じてインターネットに接続されたデバイス)が、データを生成するようになりました。このようなスマートフォンからスマート冷蔵庫までの機器が、私たちの運動習慣から棚に残っている無脂肪牛乳の量まで、あらゆるデータを生み出してきました。組織は当然のことながら、製品、人、取引に関するこれまで以上に多くのデータを収集し、活用し始めようと躍起になっていました。

データ生成量が急増し始めると、そのすべてをどこに置くかを考える必要がありました。Blue Badge InsightsのCEO兼創業者であるAndrew Brust氏は、このように説明します。「最初はHadoop、その次はクラウドオブジェクトストレージといったテクノロジーによって、希少な資源(データ)だったものがコモディティ化し、分析の考え方の傾向は『分析する価値のあるものは何か?』から『なぜこのデータを保存して調べないのか?』に変わりました」

「希少な資源(データ)だったものがコモディティ化し、分析の考え方の傾向は『分析する価値のあるものは何か?』から『なぜこのデータを保存して探求しないのか?』に変わりました」

— Blue Badge Insights社CEO兼創業者、Andrew Brust氏

ローカルのハードウェアやサーバーはセキュリティ高い一方で、オンプレミスのデータストレージはコストがかかり、拡張が難しい可能性がありました。クラウドストレージは、ストレージを第三者が監視できる安価なソリューションを提供し、クラウドオブジェクトストレージは、データをファイルやブロックではなくオブジェクトとして保存することで、ビッグデータのストレージをより実用的なものにしました。

大量のデータ生産と無限とも思えるデータ保存の組み合わせである、ビッグデータの時代が本格的に到来しました。

経営幹部の一世一代の船出

最後のハードルは、データと分析が投資に値するものであると、経営幹部を説得することでした。多くの組織にとって、データは記念品、つまり収集されるべきものでしたが、その実用的な用途はまだ証明されていませんでした。仮に組織が必要とする特定のデータを必要な形式で入手できたとしても、意思決定にプラスの影響を与えるほど効率的かつ迅速に分析できるでしょうか?

多くの組織にとって、データは記念品、つまり収集されるべきものでしたが、その実用的な用途はまだ証明されていませんでした。

組織の成長に尽力するエグゼクティブリーダーは、重要な局面では常に自ら積極的に行動するものです。1980年代には、資産と投資関係をより良く管理するためのリーダーシップのイニシアチブにより、CFOという役割が普及しました。同様に、マーケティングチャネルの複雑化により、CMOはなくてはならない経営幹部となりました。デジタルプログレッシブの成果が自ずと表れ始めると、経営幹部はデータと分析の新領域を推進する最高データ責任者(CDO)に目を向けるようになりました。

経営幹部は分析に価値を見出したものの、この新機能の立ち上げは、まだ文書化されていないプロセスでした。データサイエンティストや分析チームの設立には費用がかかり、しばしば煩雑で、適切な人材を見つけるのは金を採掘するようなものでした。まだ、重要なピースが欠けているように思えました。
それは、この10年が決して振り返ることのできない回り道をしたときでした。目指すべきものはデータの民主化、つまりデータを誰もが活用できることだったのです。

権限を与えられたアナリストが主導権を握る

準備やブレンディングからBIや可視化の技術に至るまで、データと分析のソフトウェアが本格的に普及し始めたのはこの10年の初頭の頃でした。会社がSRCからAlteryxに社名変更したのも、この時でした。これらの一般的なソフトウェア技術は、複雑化する分析プロセスに対するソリューションでした。

Alteryxの製品管理担当SVPであるAshley Kramerは、次のように回想しています。「以前は、エンタープライズETL、データ準備、レポーティング、データのカタログ化、可視化、モデリングのために、それぞれ別の製品やツールが必要でした。現在、それらはすべて単一のプラットフォームに集約され始めています」

分析プロセスの煩雑さと、ビッグデータに対応できていないレガシーツールが、分析を頭痛の種にしていました。セルフサービスプラットフォームの台頭が、その救いとなりました。複雑さが数式から排除され、ソフトウェアがコーディングとバックエンドを担当したため、分析は「ドラッグアンドドロップ」のプロセスになりました。データ担当者採用の障壁も、データチームを立ち上げるためのコストも、迅速な利益獲得という驚くべきROIを考慮すれば、実質的にゼロになりました。

451 ResearchのシニアアナリストPaige Bartley氏は、このように説明します。「組織内のセルフサービスデータと分析との扉が開かれたのです。かつては技術に精通した人たちだけの領域であったデータの活用が民主化され、過去にはしばしば隔離され、選ばれた一部の人しかアクセスできなかった情報から、技術に疎い人たちでも有意義なインサイトを導き出せるようになりました。

「組織内のセルフサービスデータと分析との扉が開かれたのです」

— 451 Research社シニアアナリスト、Paige Bartley氏

コストや技術的なノウハウは、もはや分析の理想郷を阻むものではなくなりました。セルフサービス分析によって、IT部門は真のパートナーとなりました。アナリストは自分のデータを入手したら、プロジェクトを迅速に開始できるようになっただけでなく、IT部門はリソースを常に浪費していた面倒なアドホックのデータ要求から解放されました。
「IT部門は、企業における分析、データ、レポーティングのプロバイダーからファシリテーターへと転換しました」と、The Information LabのアカウントマネージャーであるChris Love氏は語ります。「これにより、アナリストや事業部門のユーザーは、データの準備や視覚化を自分で行うことができるようになりました」
コストが下がり、納期が短縮されたことで、経営幹部は納得しました。データと分析が先導するデジタルトランスフォーメーションが組織を席巻したのです。
簡素化されたセルフサービスプラットフォームのおかげで、データワーカーは完全に解放されました。セルフサービス分析の誕生が、データと分析の過去10年を決定づけたことに疑問の余地はありません。

2010年代:データの民主化

「簡単に言えば、この10年で最も大きな変化は分析の民主化です」

— Marquee Crew社CEO、Mark Frisch氏

「分析ツールやプラットフォームが利用しやすくなったことで、競争の土俵が平らになり、過去10年間の驚異的な技術的改良によって、人々は技術的な専門知識を持たずとも、ビジネスやコミュニティへの影響をより強力にすることができるようになりました」

— T-Mobileシニアビジネスソリューションコンサルタント、Nicole Johnson氏

「データは、中央集権的で旧態依然としたBIチームによって影に隠されていたため、データにアクセスして使用する方法を知っている人はほとんどいませんでした。今では、データは広く普及し、民主化され、活用しやすい重要な組織資産となっています」

— ProKarma社インテリジェンス&アナリティクス、プラクティスディレクター、Heather Harris氏

Nick

今日、データワーカーが利用できる成熟し、テストされ、改良され続けているセルフサービスツールのおかげで、私たちはデータ民主化の黄金時代にいます

— Tessellation EMEA社ディレクター、Nick Haylund氏

BIと分析の民主化は、過去10年間で私が思い出せる最大の変化です。エンドユーザーへのリーチは画期的です」

— Decision Science社ディレクター、AJ Guisande氏

この10年が幕を閉じる

この10年の終わりまでに、分析の価値は史上最高を記録しました。IDCによると、現在、世界中で5,400万人のデータワーカーが働いており、ビッグデータと分析ソリューションからの収益は約2,000億ドルに達しています

データは誰もが認める価値あるものであり、それを理解できる者が出世し、ビジネスインサイトのチャンピオンになりました。しかし、これらすべてが来るべき10年の舞台を整えていたのです。

分析の未来

2020年1月のことです。10年の間に多くのことが変わりました。米国経済は1854年以来最長の成長トレンドにあり、技術関連のニュースではAppleのiMac Proが発売されたばかりです。10年前と同様、iPhone 11 Proで十分事足りるのに、キャスター付きのデスクトップパソコンに52,400ドルも出す人がいるのだろうかと不思議に思うでしょう。

過去10年間にわたって、あなたはデータの価値が大きく変化するのを目の当たりにし、セルフサービス分析の波に乗りました。今や、あなたは世界の頂点に立ち、セルフサービスのスキルは王の杖、変革的インサイトは王冠となっています。報酬を増やす唯一の手立ては、次に何が起こるかを予想することです

データと分析の未来を垣間見るために、業界アナリスト、Alteryxの経営幹部、革新的な顧客など、最も信頼できるデータソース、すなわち分析のソートリーダーたちに耳を傾けました。彼らが予想する上位4つは以下の通りです。

1. データリテラシーが前面に立つ

ビッグデータとAIの経営陣は、未だにデータをビジネス資産として扱っていません。

— Big Data and AI Executive Survey(NewVantage Partners)

BIの世界がセルフサービス分析の魅力に取り付かれた後には、組織はビジネス上の成果が即座に得られるか、少なくとも明らかになることを期待しました。Andrew Brust氏によれば、「戦いは終わって、布教活動は完了しました。経営幹部が賛同してくれた今では、成果を上げ、結果を出さなければならないというプレッシャーがかかっています」とのことです。

Tessellation EMEAのディレクターNick Haylund氏は次のように説明します。「テクノロジーが身近な存在になったにもかかわらず、多くの組織が期待したほどの投資対効果が得られていないのはなぜでしょうか?クラス最高のデータと分析テクノロジーを持ち、展開することは常に重要ですが、多くの部門や企業は、人材やプロセスに投資する時間を見落としがちです」

「クラス最高のデータと分析テクノロジーを持ち、それを導入できることは常に重要ですが、多くの部門や企業は、人材やプロセスに投資する時間を見落としがちです」

— Tessellation EMEA社ディレクター、Nick Haylund氏

テクノロジースタックを完成させることは、その技術を支える頭脳に力を与えることにつながります。決して秘密ではありませんが、データの価値は人間の知性の応用からしか生まれないということは、あまり知られていません。アナリストやデータサイエンティストがそれを伝えるまでは、データはいつまでたっても物言わぬ事実や観察結果の集合体に過ぎません。

決して秘密ではありませんが、データの価値は人間の知性の応用からしか生まれないということは、あまり知られていません。

セルフサービスプラットフォームの真の力は、誰もがアナリストやシチズンデータサイエンティストになれるかの敷居を下げるというだけでなく、ビジネスのあらゆる領域のナレッジワーカーに力を与え、インサイトによって仕事を活性化させることにあります。人事から財務に至るまで、セルフサービステクノロジーの一般的な強みは、分析の文化を確立することです。

451 ResearchのPaige Bartley氏は、「極めて多様な経歴を持つ従業員がデータの解釈に独自の視点を加えることができるようになり、業績と可能性をより総合的に理解できるようになりました」と述べています。

データと分析が一般に普及した今、これからの10年は、多くのデータリテラシーの高い従業員を抱える企業が躍進するでしょう。Alteryxの最高データ分析責任者Alan Jacobsonは、次のように説明しています。「2020年には、企業が急速に成長していくのと同時に、変化していく職場をCDOやそれに類する役割の人物が舵取りすることで、より優れた変革に向けた組織内の教育に新たな焦点が当てられるようになるでしょう。デジタルに精通した企業は、非デジタルの競争に打ち勝つことができます。2020年には、より多くの企業がデジタル資産を活用してビジネス上の問題を解決するようになるため、この傾向はさらに強まります」

Ashley Kramerは、「経営陣は、トップダウンでセルフサービスのデータサイエンスと分析を推進する必要に迫られるでしょう。リーダーシップは、分析への時代遅れのアプローチを脱却し、組織内の文化的転換を推進するために、信念を持ってコミットする必要があります」と付け加えます。

エンタープライズに分析を導入する際の経営幹部のリーダーシップと同様に、データリテラシーのイニシアティブはトップダウンで行われるものであり、それを効果的なものにするためには、こうしたイニシアティブを組織全体に浸透させる必要があります。

Javelin GroupのコンサルティングマネージャーであるAndy Uttley氏は、「データリテラシーは、もはや誰にとっても必須のスキルです。ビジネスを成功に導くためには、あらゆる側面からデータを理解して活用しなければなりません」と述べています。

ただし、注意点があります。Uttley氏は「データをすべてのステークホルダーの手に委ねることは、リスクを増大させる可能性があります。データガバナンス、資格を持たないデータ実務者によるモデルの過学習や『不正確な』モデル、トレーニングやスキルの不足によるビジネス全体で使用されるデータソースへのエラーの埋め込みなどがあるため」とし、データの民主化とセルフサービスの台頭が新たな課題を提示していると説明します。

日常業務に携わる人々がデータを自在に操る力には、データが不正に、不適切に、あるいは非倫理的に使用されるリスクさえ伴います。データが普及するにつれ、組織や消費者保護のためのガイドラインが確立されていくでしょう。ビジネス変革とガバナンスという2つの理由から、データリテラシーは経営幹部の優先課題である必要があります。

ビジネス変革とガバナンスという2つの理由から、データリテラシーは経営幹部の優先課題である必要があります。

Paige Bartley氏は、次のように付け加えます。「適切なデータ利用の倫理は、社会的な時代精神となるでしょう。多くの人が『データは新しい石油だ』と言っていますが、この比喩は、問題におけるリソースの表面的な金銭的価値以上にふさわしいものです。産業革命に伴う天然資源の搾取への対抗として環境意識や環境保護活動があったように、プライバシーとデータ倫理の運動は、現在デジタル革命で起きている個人的な情報資源の搾取への対抗となるでしょう」

2. データネイティブの登場

データのリテラシーと習熟度とともに、データに囲まれて育った新世代、いわゆる「データネイティブ」がやってきます。デジタルネイティブがスマートフォンやデジタル技術に囲まれて育ったように、データネイティブはFitbitNest thermostatPropellerが登場する前の時代を知りません。

「新しい言語やデータ分析のスキルの需要が高まるにつれ、適応力があり、習得の早い若い世代が優秀になるでしょう」とAndy Uttley氏は言います。「それゆえ、私たちはボトムからの変化に目を向けるべきであり、子どもたちがこれから迎えるかもしれない世界に対して、より良い準備をするための教育システムの変更を、後押しするとまではいかなくても、望むべきではないかと私は思います。これには、より高い問題解決能力も含まれますし、もちろん、Pythonのような言語のスキルも必須です」

新しい世代はデータと分析の世界に組み込まれていくでしょう。プロダクトソリューション担当SVPのAshley Kramerは、「データリテラシーに特化した新しい企業が設立され、世界中の大学でアナリティクスが注目されるようになっている」と言います。その一例がアリゾナ州立大学であり、フェニックス都市圏におけるスマートシティイニシアティブを実現するために、Alteryxと提携したばかりです。

しかし、「非ネイティブ」である私たちは、雪の山を歩いて上り坂を登り、昔ながらの方法でデータの使い方を学びました。過去10年の初めは、データは記念品、つまり収集されるべきものでしたが、これからの10年はデータそれ自体が言語となるでしょう。分析用語は主要言語となり、ビジネス用語に統合されるでしょう

3. 予測分析を「予測」する

過去10年間、私たちはデータの準備と統合に取り組んできたとすれば、これからの10年間は、予測分析と処方的分析に(私たちの友人である人工知能(AI)と機械学習(ML)の助けを借りることで)取り組むことになるでしょう。

私たちのコミュニティの下記の検索データは、予測分析と機械学習への関心の高まりを裏付けています。

Kristalyticsの最高分析責任者であるJarrod Thuener氏は言います。「あえてバズワードを使うとすれば、私たちは機械学習の時代に突入しつつあります。つまり、収集しているデータを実際に活用するということです。分析に基づいて行動できることが重要であり、やがて、継続的なフィードバックループが下流の意思決定を方向づけるような自己監視システムができるようになるでしょう」

2025年には機械が人間を支配するディストピアが実現すると思っていませんか?Dean Stoeckerは、人間はもう少し自分たちを信じるべきだと考えています。「人工知能が世界を支配すると思っているなら、考え直してください。人間の知性を増幅させれば、シンギュラリティは起こりません!人間を軽視するべきではないでしょう

データは機械学習モデルに供給されるとはいえ、データを選び、その用途を指示するのは人間であることに変わりはありません。我々が望んでいることや尋ねていることが明白であるにもかかわらず、Alexa、Google Home、Siriが理解してくれないとき、人工知能のことを「人工痴能」だと考えてしまうことがあります。人工知能がその背後にいる人間を超えた賢さを持つことはありません。芸術を数学で、音楽をコードで、人間同士のつながりをアルゴリズムで置き換えることはできません。むしろ、AIやMLはそれらを補強するものであって、代替するものではありません、とJacobsonは言います。

「AIやMLは人間を補強するものであって、代替するものではありません」

— Alteryx最高データ分析責任者、Alan Jacobson

過去10年間でデータアクセスが民主化されたのと同様に、今後の焦点はMLやAI、予測分析の背後にある言語やコーディングからこれらの技術の民主化へと移っていくことになるでしょう、とJacobsonは言います。「2019年現在、モデリングと言語処理の技術は強力ですが、アクセスしやすいようにパッケージ化されてはいません。ビジネスアナリストからデータサイエンティストまで、すべての人が完全にアクセスできるようになれば、真の改善は急速に加速するでしょう」

データリテラシーの台頭がガバナンスに新たな課題をもたらすように、アクセスしやすい高度な分析が台頭しても同様に課題が生まれるでしょう。451 Research社のシニアアナリスト、Paige Bartley氏は、「逆説的かもしれませんが、自動化やアルゴリズムシステムの利用がどのように人間の相互作用や行動を形成しているかを理解するために、データサイエンスと分析を活用する必要があります。人間の行動のほぼすべての側面が定量化され、インサイトのために活用されるようになった今、私たちは、テクノロジーを活用して社会を前進させる前に、体系的なテクノロジーの活用がもたらす潜在的な影響をより深く理解する必要があります」

Stoeckerは、このような複雑な問題でも、データと人間の知性を組み合わせた魔法で解決できると確信しています。「関連するデータで1つの問題を解決できるようになればそのデータを用いて残りのすべての問題も解決できるようになります。課題の解決における重要なファクターは、人間の知性を強化させることに他なりません。それにより、適切な質問を投げかけられるようになるのです」

4. 分析で世界を改善

次の10年に向けてのこの展望を締めくくるため、ソートリーダーたちにデータと分析で解決したい差し迫っている世界の問題について尋ねました。回答をいくつかピックアップしてご紹介します。

世界平和の取り組みに携わりたいですね。銃を無くし、代わりに若者を分析に参加させるのです。戦争を起こすのではなく、モデルを作りましょう」

— Marquee Crew社CEO、Mark Frisch氏

気候変動の是正、公共教育の分析と最適化、ホームレスの削減、社会的孤立の解消です」

— ProKarma社インテリジェンス&アナリティクス、プラクティスディレクター、Heather Harris氏

「女性がテクノロジー業界のあらゆる役割で成功するための統計情報や人生の道のりについて、年齢が11歳以上の女子を対象とした分析を行いたいです。また、テクノロジーに焦点を当てた『生まれか育ちか』の分析にも興味があります」

— Alteryx最高戦略責任者、Sharmila Mulligan

教育でしょう。私たちは依然として、世界中の多くの地域に教育が行き届いていないという問題を抱えています。テクノロジーを利用して学習を促進できれば、世界は経済的に安定し、より適切な意思決定ができるようになるため、私たち全員にとってプラスになるはずです」

— 多国籍投資銀行シニアVP兼エグゼクティブディレクター、Sean Adams氏

医療シナリオは、データサイエンスと分析の用途に適した分野です。より高みを目指し、気候変動や国際情勢の問題にこれらを応用することは、どんなに大胆であっても、取り組まなければならない目標です。また、倫理にも目を向ける必要があります。そうしなければ、AIが平和や建設的関与ではなく戦争に応用されることになるでしょう」

— Blue Badge Insights社CEO兼創業者、Andrew Brust氏

「世界の貧困を解消したいです」

— Decision Science社ディレクター、AJ Guisande氏

「解決すべき問題を1つだけ選ぶとしたら、それは小児がんでしょう」

— Paychex社データサイエンティスト、Michael Barone氏

 

医療についてです。機械学習を活用して、がん研究や予測医療アラートなど、健康状態の改善に役立てたいと考えます」

— Datacom社データサイエンスマネージャー、Adrian Loong氏

「社会の不平等を解消したいですね。分析を活用すれば、ソーシャルモビリティを改善できるはずです」

— Keyrus社コンサルタント、Joseph Serpis氏

2030年へ、そしてその先へ

この10年間、セルフサービス分析は革命を起こしてきました。そして次の10年間にも革命を起こそうとしていますが、その要因はまったく異なります。果たして予想通りの展開になるのでしょうか?それを確かめるには待つしかありません。しかし、分析を使用すれば、未来を予測することができます。素晴らしいと思いませんか?

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A Decade of Inspiration(インスピレーションの10年間)」では、Alteryxコミュニティにおける過去10年間の決定的な瞬間をハイライトしています。

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